④千歳お嬢様は見逃さない

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「なにか協力してほしいとか言われた?」 「伊万里主任を待ち伏せしたいから、つきあってほしいって言われて。帰る時間が遅くなりそうなんです」 「わかった。私から言っておくから、気にしないで彼女に見つからないように帰っていいよ」 「ほんとですか。次の日から文句言われたり、もっとひどいこと要求されたりしないですよね」 「したらもう、私に教えて」  柚希に頼むことを、後輩ちゃんにも変わらずにやっていてもう呆れるしかない。  その後輩ちゃんが食べ終わったお弁当箱をロッカーにしまっているところで、メイク直しを終えて遅れて戻って来た萌子と久しぶりに遭遇した。 「ね、柚希さ。千歳お嬢様か寺嶋さんになんか告げ口したの? 私たち引き離されちゃってさ。変なお喋りしているとか言っていないよね」 「言えるはずないじゃない。萌子だって『変なお喋り』ってわかっているじゃない。自分が小柳店長のことを、どう言いふらしたのかって。たとえ萌子が酷いことを言っているとわかっていても、あんな酷いことすぐ小柳店長の耳に入るようなこと報告できないよ。それだけ酷いことだよ」 「なんで。事実じゃん。私、プライベートでその真の姿を見た本人なんだから」 「その『なんで。〇〇じゃん』ってやめなよ。それって全部、萌子の主観で、萌子目線で勝手に決めつけていることばかりじゃない。それを同期の私にならともかく、後輩にまで同調を求めるのやめなよ。しかも、どうしてなんでもかんでもお供が必要なの。やるならやるで、自分一人でできないの?」 「はあ? 柚希は私が押し付けていたと思っていたんだ! だったらその時に言いなよ」
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