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柚希も再確認する。荻野の徹底した『長子相続』恐るべし。相応しい嫁でなければ、長男孫も切り捨てる勢いに改めて驚かされた。
「そんな、あの怖い会長に認められる女ってどんななの~。無理じゃん無理ゲー」
『ゲーム』と喩えるところからもう間違っているんじゃないかと、やっぱり柚希は萌子のそばにいるだけで心穏やかでなくなる。
「あのお祖母様、会長、額に黒子があってなんだか仏様みたいなお顔で、すっごく畏れ多いんだよね……。あまり笑わないし、目が怖い」
「あのさ。たとえ、萌子が思ったとおりに、伊万里主任と恋仲になったとしても結婚したとしても、その畏れ多いお祖母様と親族になってしょっちゅうお目にかかることになるんだよ。結婚ってそういうことでしょ」
「べつに。お祖母様だからたまに会えばいいかと思っていた」
自分に都合が良い甘い条件でなんとか結婚生活を押し進めようとしか思っていないんだなとやっと知る。
もうやめよう、相手するの。ほんと心底そう思った。伊万里主任を諦められたようで、今回の騒動は終了。もうしばらくは、男性には興味をもって欲しくないと思った。
萌子はいま首の皮一枚繋がった状態で本店にいるのだから。
一波乱の初夏だった。北国は夏の季節、街のあちこちで薔薇が咲いている。もうすぐすると、自宅ちかくの公園は百合の季節を迎える。
【もう帰るよ~😛】
お茶目な父からだった。ゴリラがドラミングしているスタンプ付きだったので、柚希はおもわずクスッと笑みがこぼれていた。
【次の休みは同じ日だったよな。小樽の所長のとこに行かなくちゃなんで、坂のイタリアンカフェで飯しような~】
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