⑤小樽で遭遇

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 父は探偵事務所で働いている。そこの所長さんが小樽の資産家次男さんで、いまは名ばかりの所長さんらしく、たまに業務報告に所員が小樽のご自宅まで出向いているらしい。  元は優秀な警官で刑事さんだったのだとか。柚希も父にひっついていくとお目にかかれるのだが、すっごく美麗ハンサムなおじ様でやさしくて、何故か上等の手作りお菓子をいつも食べさせてくれるのだ。なんでも、所長さんのお兄様と義理のお姉様が家業を支えるために忙しく働いているらしく、所長さんが探偵事務所を経営しながら、兄夫妻の子育ての手伝いをしているうちに、そちらのほうが『生き甲斐』になってしまったのだとか。  家事にお菓子作りに、姪御さんのためのハンドクラフトなどを極めることに精を出しているらしい。だからシングルファザーになった父にも非常に協力的なのだ。そこもとても考慮してくれる素敵な所長さん。名ばかりというが、元警官のためいままで築きあげたコネクションは所長が握っているらしい。なおかつ、経営の資金も資産家次男だからこそ多くもっているようで、片手間といえども所長なしでは成り立たないらしい。  その所長さんに会ったあとは、坂の上にあるイタリアンカフェで父とランチをするのもお決まりになっている。  それなら次の休暇はひさしぶりに小樽にいけるんだと、柚希も楽しみになってきた。  その時はお天気になっているといいな。ここ最近、休暇になると気持ちが重かったけれど、やっと楽しい気持ちが蘇ってきた。
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