⑤小樽で遭遇

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 ほかにも行方不明者を探したり、弁護士経由や企業経由でも様々な調査を依頼されるらしい。最近は親御さんから『いじめの証拠集め』も頼まれるのだとか。以前よりも探偵職は繁盛で依頼も一般的になり庶民にも浸透しつつあるとのことだった。  父の探偵職は柚希が成人してから転職したものだった。父の元の職業を知ると、あちこちから『うちに来て』とお声がかかったらしい。大澤所長からお声がかかったらしく、『大澤探偵事務所』に転職して七年ぐらいか。小樽に本社的な小さな事務所を優吾おじ様が構えているが、本拠地は札幌市内にあり、そこの支店的所長は父の前職先輩が担っている。 「そういえば、姉ちゃんは彼氏さんと続いているのかな。あの彼氏さんだったら、私、義兄さんになってもいいなって思ってるんだけど」 「さあなあ、ふたりとも忙しいし時間が合わないようでどうなっているのか。別れたとも聞かないし、結婚しようとも聞かないな。いまはお互いの勤務地も離れているから、なんとか関係を続けているのだろうな。ま、職業柄、不貞なんてする暇もなさそうで一応安心しているよ。あとは柚希がどんな彼氏を連れてくるかハラハラってところかな~」 「二十七歳ですが、まったく前兆なしですね」 「父ちゃんとおでかけばっかじゃ、そうなるだろな」  でも父はおどけて笑っただけで『まあ、これはこれで楽しいよ』といまは言ってくれる。 「そうだ。数日前にさ、教え子から結婚式の招待状が届いたんだよ。よかったらお嬢様も一緒に出席してくださいってさ」 「え、いいの?」  父がその招待状をテーブルへと出す。
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