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テーブルいっぱいに沢山のメニューが並んで、四人でわいわいと食事を楽しんだ。
「ああ、おいしい。それに、こんなに楽しいのは久しぶりよ」
白髪のボブカットに、上品なワンピース。ちょっと儚げなかんじのお母様は、お歳のわりには『いいとこ出身のお嬢様』に見える。いまでも、深窓のお嬢様といいたくなる雰囲気の女性だった。
そんな頼りなげにみえる女性を、素敵な大人になった息子さんが甲斐甲斐しくお世話をしているという光景。
楽しそうにお上品に食べている母親をみて、やはり小柳店長は穏やかに微笑み、嬉しそうだった。
最後に出てきたジェラートは柚希も大好物なので大興奮。どんなに美味しくて、珍しくて、今日はラッキーだったかを力説してしまったが、テーブルには笑いが起こって、父も小柳店長もお母様も笑顔で堪能してくれた。
最後に一階レジにて、父と小柳店長が『どう支払うか』という相談を始める。女性陣に聞こえないところでヒソヒソと話し合って、きっぱり折半という形で話がついたようだった。
柚希も車椅子にお母様を座らせて、離れたところで付き添っている。
男ふたりがレジで支払いをしている姿を遠くから眺めていると、お母様が柚希に笑いかけてくれる。
「おなまえ、かわいいわね。ユズちゃんっていうのね」
「はい。私がユズで、姉がモモです。でも姉の百花は漢数字の『ひゃく』と『花』でモモカなんですけれど」
「まあ、お姉様もいらっしゃって。ではユズちゃんのところは、姉妹なのね。お姉様も同居されているの」
「いえ。姉は現役の自衛官です」
「あら、凄い! お姉様、お父様を見習って?」
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