⑥レンジャー、レンジャー!

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「はい。もう凄い勢いで自衛官を目指して、いまは陸上自衛隊のヘリパイロットです」 「ええっ! 女性でパイロットということなの!」 「そうです。大型輸送ヘリの『チヌーク』という機種のパイロットなんです」  お母様がまた目をキラキラさせて『凄い凄い』と興奮してくれる。  そこに男性ふたりが戻って来る。母親がまたなにか楽しそうにしているので、小柳店長が訝しそうに歩み寄ってくる。 「どうしたの、母さん。なにかあった」 「聞いて、広海。ユズちゃんのお姉さんも陸上自衛官さんで、大きなヘリコプターのパイロットなんですって」 「え!? 大きなヘリって。まさかチヌーク?」 「はい。そうです。我が姉ながら、操縦していると、やっぱりかっこいいんです」  柚希が照れていると、父も間に入ってきた。 「もう、姉のほうはめちゃくちゃ男勝りでしてね。なんで男に生まれなかったと思うぐらいに、私の後を追うように入隊しちゃったんですよ」 「えー。凄いな、凄いな!」  お母さんそっくりに驚く小柳店長を見て、柚希もついに笑ってしまう。 『もう~、転勤ばっかりで札幌に帰ってこないんで』と父がぶつぶつ言いながらも、お母さんが乗っている車椅子を自然に自分から押しはじめた。  小柳店長が『自分が』と言う前に、あっという間にお母さんを店の外へと連れ出してしまう。  店長は始終唖然としていた。  とうとう。柚希の隣で、肩の力を抜いて諦め、父がすることに甘える様子を見せ始める。  店の裏にある小さな駐車場へと父が車椅子を押し、親は親、子供たちは子供同士で並んで歩いて行く。
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