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「ここだけの話。内密にしてほしいんだけれど。来年度までには、社長の秘書室に異動が決まっているんだ」
やっぱり! 噂どおりだったと柚希は驚いた。
「そうなると思っていました。そこに行けば、いずれは千歳お嬢様の補佐になる可能性がありますもんね」
「うん。あいつ結婚も決まって、ほんとうに良かったよ。千歳は千歳で、変な男に絡まられることがあって、同期一同でハラハラしていたんだ。そういうところお嬢様っていうか。見合いで正解だよ。身元がはっきりしているきちんとした良い男性と出会って、なおかつ婿に入ってくれることにもなって良かった。彼女は奥さんになるけれど、俺は千歳を守って、荻野も守っていきたいと思っているんだ」
あれ。ちょっとなんか……。柚希の胸につきんとした痛みが疼いた。
店長。もしかして。密かにお嬢様を想っていた?
どうにもならないから、言い寄ってきた萌子とつきあってみようと思った?
でも、もうどちらも諦めて。それなら千歳お嬢様を影で支えたい男として生きていくと決めちゃってる?
白い帆のヨットが水色の海に浮かんでいる夏色小樽。
でもちょっぴり切ない水色に見えるのは何故?
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