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「昼休み、一緒になれるかな」
「どうかな。早番でも前半と後半に分けられちゃうからね」
そこもどうなるのか柚希はドキドキしている。
後輩ちゃんからの情報によると、もう恋バナは一切しなくなったそうだ。でも業務に対する文句が多いらしい。気になるのはたまに『千歳お嬢様はズルい』という小言だそうだ。
後輩ちゃん曰く『持って生まれたものだから仕方がないですよね。実際に、千歳さんは、私たちよりもっと厳しく育てられているし、そのうちに荻野を背負っていく責任がのしかかるし、結婚だって結果的によい男性に出会えたみたいですけれど、お祖母様が選んだ方だったみたいですし。不自由な面もあると思うんですよ……』とのこと。やっぱり彼女のほうが大人じゃないかと言いたくなるような話を聞いている。
そんな萌子がまた思わぬことを言いだした。
「ねえ、店長に謝ったら許してくれるかな」
はい?? もう、目が点。
いまさら? いまから? それとも心を入れ替えて真っ正面からもう一度と言いたいのか? 小柳店長と向き合うならまだ柚希も『ありじゃない』と後押ししたかもしれない。
だが柚希はもう小柳家の事情を知ってしまっているし、萌子がどんなに甘い考えを持っている女性かも知り尽くしている。
「いまさら遅いんじゃないの。さんざん、不名誉なことを他の従業員に言い回っていたじゃない」
「柚希が言っていたとおりに、なにか訳があったのなら、もう一度聞いてみようと思って……。遅いかな」
もの凄くイライラした。いや、腸が煮えくりかえっていた。
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