⑨千歳ちゃんのお告げ

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⑨千歳ちゃんのお告げ

 だめだ。今日の自分は荒れた心を抑えることができなくて、いつもの自分に戻れない。  お客様に笑顔で応対しているけれど、それが精一杯だ。  もう限界だとさえ思った。  だから柚希も自分から動いた。 「リーダー。お話しがあります」  寺嶋リーダーに声をかけた。柚希の表情が歪んでいることに、すぐに気がついてくれた。無理に笑顔を作っていて、それすらも限界が来ていると察してくれたのだ。 「うん、いいわよ。そろそろランチタイムだね。今日は前半で一緒に入ろうか」  そこでレジに立っていた小柳店長と寺嶋リーダーがアイコンタクトを取ったのがわかった。  寺嶋リーダーに連れていかれたのは、いつもの社員食堂ではなくて、二階にある会議室だった。誰もいない部屋に二人だけで入る。  そこでお弁当を食べながらということになった。 「んー。だいたい小柳君から聞いているから。今朝のことでしょう」  やっぱり。店長の補佐として本店に来ただけあるなと、柚希は安心感を得る。多くを語らなくても察してくれそうだった。 「まあ、小柳君もちょっと下手打ったよね。おなじ部署の女の子と付き合うリスクを忘れちゃっていたんだね。彼も将来を少し不安に思って、つけ込まれちゃったのかな」  年配者らしい所見だった。完璧に仕事をする小柳店長でも、自分の家族のことになると心弱くなることもあって当たり前なのだと。  そして今回は、萌子が小柳店長に気に入ってもらうまでに、虚構の女性像で近づいて、店長が弱くなっている隙に上手く入り込んでしまったのだと言いたいらしい。
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