⑨千歳ちゃんのお告げ

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「情けないのですけれど、私もう、太田さんとは一緒にいたくないです。仕事中でも彼女を見ると嫌悪感しか湧きません」 「ごめんね。そこまでに追い込んだのは、管理者である私と店長の不徳とするところ。あなたを板挟みにして巻き込んでしまった……。力及ばず、申し訳ないわ」 「そんな……。私こそ我慢も機転も利かず申し訳ないです。ですが、私がそばにいても、太田さんは甘えてくるだけです。もう限界です」 「わかりました。店長と対処します。今日はどう? 無理なら早退していいのよ」  理由がくだらなすぎて。怒りのコントロールができなくて情けない。そこからはまだ逃げ出したくないと思い、柚希は『いいえ、落ち着いたので、このまま勤務します』と返答していた。  とりとめない感情が渦巻いていたが、リーダーに吐露したら、少し気持ちが落ち着いた。 「あなたがそんなになるなんて余程だと思うのね。念のため、今日はバックヤード業務を中心にやってみましょう。彼女にも交代で下がってもらって、その時はあなたが店頭に出るように小柳君と調整するから」  ほんとうに気遣ってもらって申し訳ないし、情けない。  それでも我慢に我慢を重ねて、最後にどうしようもなくなってお客様の対応に響いたり、業務で失敗するようなことはしたくなかったのだ。  柚希も寺嶋リーダーの配慮に礼を述べて、甘えることにした。  午後は、バックヤードで伝票入力をすることから始まった。 「ほんとうに、ごめん。俺の不始末のしわ寄せが神楽さんに行ってしまって」  地方発送受注分を工場出荷にするための伝票を小柳店長から渡される。 「未熟で申し訳ないのはこちらです。大人の対応ができなくて」
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