⑩ユズちゃんに会いたい

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「俺、神楽さんのことは仕事でしか見ていなかったけれど、職場ではすごくしっかりお姉さんの横顔なのに、『ユズちゃん』の時は、ころんとして、ちょっと高校生ぽい幼さがあってかわいいんだなと驚きだったな。母がそこを気に入ったみたいでね。最近、よく話すんだよ。俺が知っている職場の神楽さんはしっかり者のお姉さんぽいよ、母は『ユズちゃんはちっちゃくてころんとして、愛らしいのかわいいの。女の子なの』ってさ」  うわー、なんの話をしているんだと、びっくり飛び上がった。  店長にどう見られているかもわかったが、仕事ではしっかり者と言われて嬉しいのに、ユズちゃんのときはころんとしてかわいいとか、ちっちゃくて愛らしいとか、なんだかくすぐったい気分! 「お父さんにとっての神楽さんは、母とおなじで『ちっちゃくてころんとしている可愛い娘のユズちゃん』なんだろうねという話題が絶えないんだ。あ、仕事中に俺のことを隊長と見立てて『レンジャー!』をやってくれたと話したら、また『かわいい、かわいい。見てみたい』ってそれだけではしゃいでいたよ」  もう柚希は顔が真っ赤になっていたと思う。顔だけじゃない、身体中が熱くなった。  そうか。あれだな。もっと大人女子のファッションを気にしなくちゃいけなかったんだと気がつく。  だが柚希は小さめ身長なので、大人っぽい服が似合わず、そうでなければシンプルで女子らしい服を着ても子供ぽい着こなしになってしまうのだ。それもこれも身長が低めだからだ。亡くなった母に似ていると父は言う。これまた童顔なので、何を着ても子供っぽいに拍車がかかる。  そこがまた、娘が欲しかったという芹菜お母さんの感性をくすぐらせているのかも、と柚希は思った。
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