⑩ユズちゃんに会いたい

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「千歳さん。ご無沙汰しております」 「え、え、え……。小柳君、いま仕事が終わったんだよね。ということは……ええ、お母様、もしかしてお一人でここまで!?」  千歳お嬢様ですら、芹菜お母さんが強い意志を持って独断でここまで来たことに驚いている。伊万里主任もだった。 「今日、暑かったでしょう。大丈夫だったんですか……。車椅子だとアスファルトが近いからよけいに暑いと聞いたがありますよ。姉ちゃん、すぐに涼んでもらったほうがいいよ。あ、そこに、いいカフェがあって……」  伊万里主任がおなじカフェを思い浮かべていることが柚希にも伝わってきた。だが柚希が言うより先に、芹菜お母さんが嬉しそうに伊万里主任に告げる。 「あら、ユズちゃんが案内してくれるっていうカフェとおなじなのかしら? ますます行きたくなっちゃった」  荻野姉弟がそろって『ユズちゃん??』と眉をひそめた。  さらに姉弟そろって、疑問の視線を小柳店長に向ける。 「小柳君。……『ユズちゃん』とは、どのようなお知り合いで?」 「わー、小柳兄ちゃん。まともな子とご縁あるんじゃん」  なにを言い出すんだ伊万里主任と柚希が面食らっていると、姉の千歳お嬢様が弟の黒髪をパシリとはたいた。  どうしてこうなったのか。荻野姉弟付きで、そのカフェに一緒に行くことになってしまった。
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