⑪柚の芽生え

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 ご姉弟、どうやら『姉支払いで、半分こで食べる』ということで話がついたようだ。伊万里主任が『タダ食いできるけど姉貴と半分こかよ』と複雑そうな顔をしているところで、柚希も笑みが込み上げてきた。  柚希と小柳母子は、水出し珈琲のカフェラテをいただくことにした。 「それで。お母様がどうして、神楽さんにわざわざ会いに来るほどのことが起きているわけ。ユズちゃんっていつのまに」 「近いうちに、千歳にも話しておこうと思ったんだけれど……」  千歳お嬢様の問いに、小柳店長も正直に答える。  そのまま小樽で遭遇した出来事を、小柳店長が千歳お嬢様に話していく。荻野姉弟は『それ、どこのお店、どこにあるの。おいしそうじゃない』と食に反応するのだが。 「え! 神楽さんのお父様、冬季遊撃レンジャーの教官をされていたの!?」 「めっちゃ強者じゃん! さらに、姉ちゃんがチヌークのヘリパイって凄くね!!?」 『しかもいまは元レンジャーの探偵!?』  と、ご姉弟で目を大きく見開いてのけぞって驚くので、柚希のほうが畏れ多くてあせあせしている。 「あら? 小樽の所長に報告へとお父様が出向いた先で、小柳君と遭遇したってことは。大澤探偵事務所?」 「そうです。小樽が本拠地で所長さんは、そちらにいらっしゃるんです」 「優吾さんのこと?」 「ええ! 千歳さんご存じなんですか!」
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