⑪柚の芽生え

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 息子に遠慮して様子を窺っていた芹菜母が、また頬を綻ばせる。 「嬉しい。今度は石狩の海なのね。久しぶり」 『久しぶり』という言葉が多いなと柚希は気がついた。  やはり引きこもっていたのか。多忙な息子とドライブに行くのは滅多にないことだったのか。でも人の手が多ければまた店長にも余裕が出来て、芹菜お母さんもでかけやすい。それに同期の千歳お嬢様とは気心知れているようなので、柚希も安心だった。  では、また一緒にでかける荻野製菓の四人は休日を合わせねばならないとシフト調整の話に入った。少し先になるが夏真っ盛りの八月に入ったら一緒に行こうということになった。  あ、なんか。凄いメンバーに囲まれるドライブじゃないかと、柚希はやっと気がつくが遅かった。
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