⑫会いにいきます

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⑫会いにいきます

 行きたい。その気持ちに気がついた柚希は、すぐにスマートフォンでメッセージを打ち込んでいた。 【大丈夫ですか。よろしかったらお手伝いに行きたいです。おじゃまでしたら遠慮します。でも許していただけるなら、どちらにお住まいか教えてください。またなにか必要なものがあればお届けします】  どうかな。いまはまだ病院へ外出中かな。  ひとまずお弁当をもって食事をして様子を見て――。  柚希がロッカールームを出る前、それほど間を置かずに通知音が聞こえた。 【ありがとう。ユズちゃんの顔を見たら母も元気になるかもしれないので、お願いしてもいいかな。うちの住所は、〇〇区……。地下鉄南北線の〇〇駅から……】  嬉しさで震えた、涙が滲みそうだった。  受け入れてくれたというか、頼ってくれたこととか、信じてくれることとか……。店長がひとりで頑張らなくていいこととか……。芹菜お母さんの力になれることとか……。  仕事を終えて、制服から私服に着替えると柚希は店長宅へ一直線! 地下鉄南北線に乗り込み、迷うことなく店長の自宅へ。  駅を降りて住所にあるマンションへ向かう。なんなく見つけてエントランスでインターホンを押すと店長が出てくれた。そこでロックを解除してもらい内側エントランスのエレベーターへ。  札幌市の大きな河川を一望できそうな高層マンションだった。  でも三階という割と低いところに住んでいる。  エレベーターを使っても、通路に来ても、車椅子に支障はなさそうだけれど、ひとりで大通まで出てくるのは、まだ心許ない状態だったのかもしれない。しかも昨日は暑い日だったのだから。
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