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こうして住まいの雰囲気を見ると、お母様の趣味がよくわかる。女性が丁寧に作り上げたリラックスできる優しい空間だった。それに。店長の柔らかい雰囲気から感じ取っていたが『よいお家柄のご家庭』で育ったことがリビングを見ても良くわかる。
芹菜お母さんも、お嬢様育ちで、良いところの奥様で、きっと亡くなったお父様も品の良い富裕層育ちのパパさんだったのだろうとわかる自宅だった。
「店長はなにか食べられましたか? 私、勝手に材料を買って来ちゃいました。必要なければ私の自宅用に持って帰ります」
「いや、助かるよ。今日は病院に連れて行くだけで一苦労だったもんだから」
「冷やし中華でも作ろうかと思いまして。ゴリラ風ですけれど」
「ゴリラ風! いきなり来るなあ~。お父さん風ってことか」
「そうです。リンゴ酢風味なんです」
「う、うまそう。お願いしようかな」
「是非是非。芹菜さんはどうですか。なにか食べられましたか」
「経口補水ゼリーとか栄養ゼリーだけかな。粥を作ろうかと思っていたところなんだ」
ため息をついてうつむく店長も、かなり疲れているように見えた。
「勝手にキッチンを使わせていただけるなら、店長も少しお休みされたらどうですか。店長も暑さ負けしていそうで……」
「うん。いつも冷房がある店舗にいるから。外に出るとちょっと暑さがきつかったよ」
甘えて休んでくれそうで、柚希はホッとする。
キッチンに入れてもらい、必要な道具がどこにあるのか、冷蔵庫から必要なものだけ出してもらい、エプロンを借りて柚希は料理をすることに。
その間だけ――と、小柳店長は自室へと休むためにキッチンを出て行った。
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