⑬うほうほウッホ🦍

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 こちらのお宅、適度な温度管理をしてくれるクーラーなのか快適だったのに、まるで暑い外から帰ってきたかのように、柚希の身体から汗がじんわり滲んでいた。  あたふたしながら芹菜お母さんの部屋へとお粥を届ける。  一度、目が覚めたからなのか、横たわっているけれど目を開けて、物思いに耽る様子で天井を見上げていた。 「芹菜さん。お粥をもってきましたよ」 「ありがとう。ユズちゃん。もういい匂い……。ちょっと小腹が空いた感覚があったから嬉しいわ」 「でしたら、よかったです」  上品なベビーピンク色のコットンパジャマがよく似合っている。きちんと切りそろえられた白髪のボブカットも素敵だなと思いながら、芹菜母が半身起きあがれるように柚希は介助する。  ベッドの横には座れるようにスツールが置いてある。きっと息子の店長が、いつでも付き添いで座れるように置かれているのだろうと、わかった。  柚希もそこに座って、小鍋から茶碗へと少なめによそって手渡す。 「いただきます」  木製のスプーンですくって、ひとくち頬張ってくれる。 「おいしいわ、ユズちゃん。お米も最初から炊いてくれたのかしら。鶏のだしだけで風味はあるし、でもあっさりしていて優しい味ね。ちょっとのゴマ油のかおりが、なかった食欲をちょっとだけそそるようにしてくれるの」
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