⑬うほうほウッホ🦍

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「ああ、よかった。キッチンを使わせてもらったら、芹菜さんがとってもお料理好きだとわかるものばかりで。若輩な私の手料理で大丈夫かななんて、ちょっと緊張しちゃいました。父と作ってきたので、私のご飯、若干男飯よりなので洒落っ気なくて」 「あら。私だって、男の子を育ててきたのだもの。がっつりメシを頑張ってきたのよ」 「あ、千歳さんが言っていた『油淋鶏(ユーリンチー)』。私も教わりたいです」 「もちろんよ。だったら、元気になったら一緒にお料理しましょうよ」 「いいんですかっ。キッチンがめちゃくちゃ憧れキッチンで、うきうきしちゃいました。それに! このレース編みの鍋敷き、めちゃくちゃかわいいんですもん。スプーンも食器もかわいくてお洒落なものばっかり!!」 『お洒落雑貨』の雑誌のようなリビングにキッチンだったのだ。もう~素敵奥様のプロといいたい!! 「ふふ、うれしい。私が育てた空間だから、ユズちゃんが気に入ってくれて」  二口、三口と続けて頬張ってくれ、柚希も胸をなで下ろす。  一杯食べ終わるところで、店長も母親の部屋に様子見にやってくる。 「あ、母さん。食べてる」 「うん。おいしいのよ。広海もいただいてみたら」 「味見だけ」  店長がスプーンを持ってきて、部屋に入ると柚希のそばに座って小鍋からひとすくい。一口だけ味見をした。 「うまい! これはいいな。味気ない粥もおいしいときあるけれど、それが物足りないときはこんなのがいいな」 「うん。お母さん、元気出てきた」 「ほんとうだ。顔色がよくなってきたな」  やっと母子がぱっと笑顔に輝いてくれて、柚希も嬉しくなってくる。
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