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「そうだ。ゴリラ風冷やし中華もうまかったです。今日みたいな暑い日はちょっと甘みがあるリンゴ酢風味のほうがさっぱりかんじられてよかったよ」
「あらなに。リンゴ酢風味の冷やし中華? おいしそう。ユズちゃん、私にはそれを教えて。……でも、ゴリラ風ってなに?」
「それがさあ。彼女ったら、お父さんのことをゴリラっていうんだよ。そのお父さん直伝だからゴリラ風なんだってさ」
「まあ。ユズちゃんったら、お父さんのことそんなふうに言って大丈夫なの?」
そんなふうに言われ、柚希はエプロンのポケットに入れていたスマートフォンを取り出し、いつも父とやりとりしているメッセージの画面を見せた。
そこには【今から帰るな~😯ショッボーンつっかれたーうほうほ】というお帰りメッセージの下に、ゴリラがしょんぼりしているスタンプが貼られているトーク画面が。
それをひと目見た芹菜お母さんと広海君がそろって目が点になっていた。
「あの、見かけじゃなくて。父、脱いだらまさにゴリラ並の筋肉ボディなので、子供のころから私の目の前で、うほうほってやっていたんです。その名残がいまも。それで、なんでも自分のことゴリラ風、ゴリラ流って父から言うんです」
品の良いお母様と息子が一緒に『ぷふ』と吹き出すほどだった。
「もう~。お父様ったらおちゃめ!!」
「そっか。元レンジャーのお父さんだから、逞しい身体から来ていたことだったんだ。納得。でも、お父さんから『うほうほ』って!!」
「子供のころからなので、すっかり日常化していて違和感なかったんですけど。でも、やっぱりそんな父を見るとほっとするのも確かです。あ、うちにはもっと凄いのがいるんですよ」
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