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「おおお! ユズ、新メニューに挑戦か。うまいうまい! ビールに合う合う!」
「油淋鶏、挑戦してみたの」
「うんうん。うまいうまい! あ、そうだ。今日さ。モモから連絡があったんだわ」
「そうなんだ」
「なんでもさ。ヒガシ君も連れてくるっていうんだよ。泊まれる準備をよろしく頼むってさ。悪いな、柚希。姉ちゃんとヒガシ君が泊まれるようにしておいてくれるかな」
「うん。わかった」
そこで父が油淋鶏をもぐもぐと食べながら、怪訝そうに眉をひそめている。
「なーんか、百花のやつ、変な感じだったんだよ。ユズ、なにか聞いてるか」
ここまで平静を保ってきた柚希だったが、内心どっきり。
「にゃ、んにも」
噛みました。父が目の前でじっと真顔になって窺っている。柚希は苦笑いで取り繕った。
「うん。わかった。もういいよ」
あー、お姉ちゃんごめんなさい。お父さん察しちゃったかも。
元レンジャー教官の父に敵うはずもなく。柚希はひそかに心の中で姉に泣いて謝っている。
「ユズ、おまえ『も』な。最近、料理の味付けとか雰囲気が変わったな」
それは芹菜お母さんから、いろいろと教わって、一緒に夕食を作る機会が増えたからです――。と、父にはまだ言えずにいた。
だが最近の柚希が『芹菜さんのお手伝いをしている』ことは、父も知っているので、そのおかげとわかっているはずだった。
そして柚希も勇気を出す。
「広海さんと芹菜さんが、お父さんとも一緒に食事をしたいと言っているの。今度の金曜日の夜なんだけれど、どうかな。広海さん、本店店長から社長秘書室に異動になって、主任に昇格したから」
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