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村雨女史は、姉の百花のようなタイプで、すらっと背が高くてショートカットのクール美女。キビキビとした綺麗な仕草の接客に定評がある。お客様に安心感を与え、彼女なら大丈夫という信頼性も持たせる優秀な販売員だった。彼女もいずれは、本社の上階へ行くのではないかと同期間では囁かれている。
そんな村雨女史から、柚希を誘ってくれたのだ。
二人一緒に同じチキンのスープカレーをオーダーして、まずはビールで乾杯をした。
「久しぶりに会って、せっかく楽しくしたいところ申し訳ないんだけどさ」
と村雨女史が切り出してきた。
「萌子が柚希と連絡が取れないとか、おかしなことを言いだしたんだよね」
「私と連絡が取れない? 花乃香ちゃんが釘を刺してくれたから、約束を守って私にメッセージを送ってこないだけなんでしょう」
「うん。それはもう、最初はね。その通りにしていたみたいなんだよ。でも、あの萌子じゃない。喉元過ぎれば――で。工場勤務を始めて知り合いもいなくて、噂で冷ややかに見られていて辛くなったところで、柚希にまた愚痴りたいと思ったんじゃない? それでコンタクトを取ろうとしたらメッセージが送れないんだって」
「送れない? 私、ブロックしてないけれど……」
「そうじゃなくて。文字を打ち込んで送信をしようとしても、エラーが出てメッセージが消えてしまうとか、だったら電話をしようとしたらいつも通話中だったとか。間違い電話をかけてしまっていたとか、なんだかんだで、柚希に連絡が取れないって喚いていたよ」
ビールを飲みながら、柚希は嫌な予感がしてきた。
萌子が伊万里主任を追いかけていた頃と既視感を覚える。
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