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「花乃香ちゃんとは連絡が取れるの?」
「それが、私とは三回に一回しか通じないとか怒っていたかな。やっと通じたとばかりに、一気に喋られたんだけど。これまたどういうわけか、いきなり切れちゃってさ。それ以来、萌子からもかかってこないし、メッセージがこないし、こっちもかけ直したけれどいつも通話中。どうしたんだと思ってさ。萌子の状態を把握しようと、ほかの同期からも連絡をとってもらおうとしたんだけれど、これまた誰も萌子と繋がらないんだって。怖くないこれ」
まさか。柚希にふと思い浮かんだのは『荻野のご加護』だった。
なんとなく。柚希ではなく、異動した広海がその範囲へと入ることを許されたような夢を見たのだ。
『これから、荻野を護る使命があなたにも生じるからね。要らないものは切らせてもらうよ』
どんな人がそう言っていたのかわからない。
でも、百合が原公園から帰ってきた夜に見た夢なので、気になって覚えていたのだ。広海にも伝えてある。彼は『俺が千歳のそばで働くようになるから、パートナーとなる予定の柚希も同様だということなのかもしれない』と、妙に信憑性がある夢みたいに真剣に捉えていたのだ。
だから余計にそう感じる。これを花乃香に言うべきかどうか迷った。
迷った挙げ句。リーダー的存在の彼女には伝えていこうと柚希は判断をした。これまでの小柳母子との馴れそめと、結婚を見据えたお付き合いを始めたことを正直に伝えた。夢のことはひとまず保留にする。
花乃香は驚き、でも、その次には輝く笑顔で祝福してくれる。
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