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彼女の隣で常に穏やかな笑みを浮かべている朋重さんも入ってくる。
「いいじゃないか。千歳の思いどおりになったのだろう。どうせだから、計画どおりに、皆で石狩に行こうよ。小柳君のことも、川端家に紹介しておきたいんだろう」
「そうよね。保食神様にもご紹介しておきたいしね」
「俺は、タコ天食べたーい」
姉とその婚約者と弟という三人で、常に仲睦まじくしていることが伝わってくる光景だった。
「じゃあ、こちら職場でも公認ということにしておくね。父とお祖母様にも報告しておくから。柚希さんの店舗側はどうするの」
「岩崎店長と寺嶋リーダーには報告をして、あとは柚希の判断で伝えられるスタッフに報告するという形にしようと考えてるよ」
「うん。それでいいんじゃないかな。室長として了解しました。おめでとうございます」
千歳お嬢様が席を立つと、息が合ったように朋重さんと伊万里主任も立ち上がって、三人そろって、『おめでとうございます』とお辞儀をしてくれた。
ここで柚希はやっと実感が湧いてくるようだった。
荻野の跡継ぎ娘と、そのお婿さんと弟御さんに認められたという気持ちになれたからかもしれない。
この日はそこで失礼をして柚希は広海と別れ、一階にある本店店舗に戻った。
その日から柚希は、シフトが休みの日は小柳家で過ごし、仕事の日はいままで通りに実家に帰宅して父と顔を合わせ食事を取ろうと考えていたのだが。
「芹菜さん、おはようございます」
「ユズちゃん、いらっしゃい。待っていたわよ」
「まだ暑いので、先に買い物してきちゃいました。足りないものがあったら……」
休日の午前から元気よく小柳家を訪ねた柚希だが、明るいリビングのソファーに父がいたので驚く。
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