5115人が本棚に入れています
本棚に追加
店頭でいつもどおりの業務をしていると、入店された女性を一目見て柚希はギョッとする。
ちょうど手が空いていて接客待ちをしていたのだが、その女性と目が合うと彼女から手を振ってきた。
「ユズ、ただいまー。来ちゃったよ」
隣には超マッチョなお兄さんまで。
「ユズちゃん、ただいまー!」
黒のノースリーブブラウスに白いパンツ、しかも黒いサングラスをかけているモデルのようなショートカットの女性が、颯爽と歩いて柚希に近づいてくる。
「お、お姉ちゃん。家じゃなくてお店に来ちゃったの」
「うん。先に部隊とか同僚先輩上官への土産を確保しておこうと思ってさ」
寺嶋リーダーも、後輩の綾音ちゃんも、目を丸くしてこちらを見ている。思わず柚希はリーダーに告げる。
「姉です。こちらは、姉のカレシさんです」
夏の商戦時期を過ぎて、客入りも落ち着いている時期だったため、店内のお客様もまばら。ほかのスタッフがほぼカバーできている状態。なので、寺嶋リーダーが柚希のそばへと挨拶にきてくれる。
「まあ、神楽さんのお姉様?」
「はい。姉も自衛官なので」
「え!? お父様だけじゃなくて!」
「姉は現役の陸上自衛官でヘリコプターのパイロットです。こちらのお兄さんは第一空挺団の隊員さんです」
寺嶋リーダーがさらに驚きの声を出したが、少し離れたところにいる綾音ちゃんまで『え、パイロット!』と驚いている。
モデルみたいなクールビューティーな姉だが口を開けばそうでもなく。
「柚希に頼んだら間違いはないだろ。ここのお菓子、お土産ですごく喜ばれるからさ。見繕ってくんないかな」
最初のコメントを投稿しよう!