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「まあ、嬉しい。ぜひぜひ、いらして。女性パイロットの方が親戚になるなんて、あちこちに自慢しちゃうわきっと」
「芹菜さんもぜひ。今度は駐屯地の一般公開にいらしてください。車椅子でチヌークに乗れる手続きとりますよ」
「ほんとうに!? ねえ、広海。聞いた? ね、その時は連れて行ってね」
「もちろんだよ。俺も目の前で見てみたかったんだ」
和気藹々とした会話が弾んでいくので、柚希もホッとして一緒に笑い合っていた。
スタッフがオーダーを取りに来る。父がメニューを広げ、各々の希望を聞きながら伝えていく。
ジンギスカンの肉に、一般的な焼き肉に、ラーメンサラダ、蟹足、それぞれ希望のアルコールなど。オーダーを取り終えるとスタッフが部屋を出て行く。
そのタイミングだった。急に父の表情が硬く変化したように柚希には見えた。『結婚とは』と柚希に厳しく説いたあの時の父に似ていたから、柚希はドキリとする。
「芹菜さん。先に話しておいてよろしいですかね」
「そうですね。それからゆっくりお食事したほうがいいかもしれませんね」
対面するように座っている親同士が目線を合わせ、一緒に頷き合っている。
柚希は隣にいる広海と顔を見合わせ『まさか』と緊張を募らせた。
「娘たち、そして広海君に伝えておきたいことがある」
まさか、まさか。柚希と広海は揃って戦々恐々としたし、なにかを察していた百花姉も気構えた表情に固まった。
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