⑲報告します!

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「百花、おかえり。ヒガシ君は遠いところから、娘と一緒に来てくれてありがとう。ひさしぶりに会えて嬉しいよ。そして、ふたりとも国防の職務、ご苦労様。今回、久しぶりの帰省だ。これからも職務第一、なかなか帰省はできないだろう。だから、このタイミングで伝えておく」  姉の報告より、父が先?  いつのまにか。隣にいる広海が柚希の手をテーブルの下で握りしめてきた。最後は父と母が選んだことを受け入れよう。ふたりでそう決めてここに来ることにしていた。もう心の準備は出来ている。 「いまの家を売ろうと思っている」  え? 予想もしていないことを言われ、柚希と広海は一緒に呆然とし、姉は『どうして』と静かに聞き返していた。 「さらに、いま芹菜さんと広海君が住んでいるマンションも売りたいと芹菜さんは思っている」  まず広海が驚き、隣にいる母に詰め寄った。 「母さん、どうして。いまのマンションは、車椅子でも暮らしやすいようにと事故の後に引っ越してきて、やっと住みやすくなってきたところだっただろう。お母さんが好きなようにコーディネートしてきて、好きな家になったところだっただろう」  息子の必死の問いに、こんな時、芹菜母は母親らしく悠然と息子に微笑み返す。 「ユズちゃんとあなたと、勝さんと、皆で家族として暮らすためには、あの家を売ってもいいと思ってるの」 「え、勝お父さんも……一緒……」 「そうよ。お父さんの助けも必要だし、お父さんをひとりにしたくないの。話し合ってお父さんと決めたのよ」 「ちょっと待ってくれ――。最近、ふたりでよくでかけていたのは?」
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