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「だから。お母さんから提案をしたのよ。これから起きること、いろいろと考えたうえでよ。最初、勝さんは『自分はひとりでも大丈夫。元自衛官だから、ひとり暮らしもお手の物だ』と遠慮していたけれどね」
芹菜母の説明に、父も入ってきた。
「結婚をしても、柚希と広海君はこれまでどおり、芹菜さんの介助をしながらの生活になる。芹菜さんはいまでも充分ひとりで動いて生活はできている。だが、柚希に子供が生まれたらどうなるだろう。柚希が仕事を続けるとなったらどうしたらよいのだろう。芹菜さんはそこを案じていた。自分は頼りになる姑にも祖母にもなれないだろうと――。負担になりたくないとのことだった。芹菜さんが頼りにならないという意味ではなく、『物理的』に考えても、それは一理ある。だから父さんも考え直してみた。子供夫妻の手が足りないところは、父さんが差し伸べたらいいとは思っていた。だが、それなら、近いところがいいだろう。それなら、もう二世帯にしようかという話になった。準備できる方向性は決まりつつある。あとは、子供たちの了承を取る段階となって、今日ここで報告している」
父と芹菜母が頻繁に会っていたのはデートでもなんでもなく、親として今後のためになるようにと、新しい家族になるための準備に奔走してくれていたということになる。
こんな時も真顔で落ち着いて聞いていた姉が、父に問いかける。
「なるほどね。それで、実家の家土地を手放すから、帰省したタイミングで長女の私にどうしたいかと、父さんは聞きたいわけだ」
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