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「で、恋人のヒガシ君が珍しくも一緒に来るということは? ちょっと覚悟しておくか、とね。でもこれで、姉も結婚を考えているのかもしれないな、それなら――と芹菜さんからの提案を受け入れる腹も決まったわけ」
姉妹揃って『お父さんには敵いません』と項垂れた。
屈強の男たちをまとめあげてきた、精鋭の教官だった人だ。人の心理に行動には目端が利いて当然。ちょっとの気の緩みで全て読み取られていたということだった。
だが今度は父が席を立ち、姉と並んでいる体格の良い青年へと頭を下げた。
「ごらんのとおり。男勝りな娘です。でも、なによりも、百花のそばにいるパートナーが、強い男以上に、優しい君であって良かったと思っている。どうぞ、百花をよろしくお願いいたします」
父親としての姿に、あの姉が涙を浮かべていた。いつも笑顔のヒガシ兄さんも神妙な様子で、崩れそうな姉をそっと抱き寄せてくれている。
「お父さん、よろしかったですわね。おめでとうございます」
芹菜母からの祝福に父が照れながら席に戻る。
姉とヒガシ兄もホッとした様子で席に戻った。
「しかし。二人とも、よく続いたな。勤務地が別々の長距離恋愛で、ハラハラしていた時もあったよ。ヒガシ君、ありがとうな」
「いえ。だって、こんな素敵な女性、手放したくないじゃないですか」
「そう言ってくれると、父として嬉しいし、安心するよ。ふたりとも、おめでとう」
もうそれだけで、柚希の目の前に座っている姉がだあっと涙を流して号泣しはじめる。
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