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寿々花がケーキナイフを白いロールケーキに入れようとしたのだが。
「うわー、やっぱり寿々花待ってくれ。これ冷凍してどれぐらい保つ? やっぱり壊したくない。このまま保存しておきたい」
「いえ、三佐。無理ですから。きちんと写真に残して、おいしく食べなくちゃ。ねえ、たっくん」
「ぼく、白いケーキと抹茶ケーキ、いっしょに食べたい」
「えええ。そんな、いまこのケーキを目にしたばっかりなんだぞ。すぐに壊して消えるだなんて……もったいない。ずっとそばに置いておきたい」
将馬がロールケーキを腕に囲ってしまい、なかなかケーキナイフを入れさせてくれない。
「三佐、来年もつくるよ。ぼく」
「……そ、そうか……。いや、初めてのプレゼントはこれしかないからな」
「おい。館野、おいしく食べるのが贈り主への最大の御礼だぞ」
「そうですよ。三佐。陸将補からのお言葉ですよ」
「俺、いま、プライベートなんで。上官の言葉が聞こえません」
「館野が……、逆らった……!」
「三佐、ぼくと食べよう。パパと一緒に」
「そうだ、そうだ。将補も食べたいぞ。命令だ命令、上官命令! 寿々花……じゃない、館野陸曹、切り分けたまえ。司令部からの指令だ」
「ラジャー、旅団長!」
上官でもある義父と拓人の言葉に諭され、やっと将馬がケーキを手放してくれた。寿々花は間を与えず、すかさずケーキナイフを差し込んだ。
がっかりする将馬に拓人が告げる。
「三佐、パパ、まだ贈り物あるんだ。ぼくね、いまから遥ママとすずちゃんともセッションするよ。赤いスイートピー、三佐好きでしょ」
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