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「将馬さん、男の子と女の子が揃うって喜んでいたね。俺も楽しみだよ。今度は女の子、かわいく写真に撮っていくからね」
「ありがとう。もうたっくんも大変だもんね。女の子が生まれるなら、一緒にピアノを連弾するんだって。ピアノを習わせるって決められちゃったよ」
「拓人、最近すっかり兄貴気分になっているもんな」
「ほんと。でも、ほんとうにお兄ちゃんの顔になってきたなあって思っちゃう時があるの」
「あるね! ちょっと前まで、大人しくて、俺のそばを離れない赤ちゃんぽさがあったのになあって。兄妹ができるとまた違う成長が見られるもんなんだね」
そこで岳人パパが深いため息をついた。
寿々花に聞かれてもいいため息? それとも思わず出たけど本人も気がつかないため息?
そして寿々花も岳人がここのところ、妙に思い悩んでいる表情を瞬間瞬間に垣間見せることに気がついていた。
祝福してくれたことはよくわかっている。妊娠したと知らせた時、それはもう拓人と抱きあって『新しい家族が出来る。もっと沢山ドライブして旅行しよう』とはしゃいでくれた。
拓人にも『お兄ちゃんになるんだな』と自然に伝えていたし、拓人も『すずちゃんの子のお兄ちゃんになる』と元気いっぱい宣言してくれた。それから拓人まで寿々花がすることに、いちいち『あぶないよ。気をつけて。ぼく手伝うよ』と気遣ってくれる。これは気が利く岳人パパをお手本にしてきたからだなと感じるほどだった。
新しい家族の誕生を歓迎してくれたことは、寿々花にも将馬にも伝わっている。
ただ、ほんとうに一瞬、たまに一瞬、岳人パパが浮かぬ顔をしている時がある。
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