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そんな時、寿々花は『まさか……。ついに拓人を将馬に返して離れていくつもり?』と不安になる。
そうじゃない。将馬ももうそんなことは望んでいない。拓人にとって岳人パパは正真正銘の父親。すぐに離れてはいけないと拓人を手放さなかったのは岳人パパ自身なのだ。そのためにわざわざ札幌移住までしてくれた人なのだ。離別を考えているとは思いたくない。決して、拓人から離れない。そんな決意だったはずだ。
だったら何故? そんな顔をするの? 寿々花はここ二ヶ月ほどそう思っている。
将馬にもそんな違和感を伝えてはいる。だが彼も『岳人君が言い出すまで待っていよう。もちろん、離れると言いだしたら引き留める。必死に。俺自身が彼といたいんだ。本当に親友だと思っている。親権を勝ち取った戦友でもある。また、俺が緊急で留守にする時も安心して留守を任せられる男性でもある。力を合わせて過ごしていきたいと思っている家族だよ』。将馬もそう言い切ってくれた。
ブランケットをお腹から膝下まできちんとかけた寿々花を見て、岳人パパも安心した笑みを見せてくれる。
こんな気の利く旦那さんだったはずなのだ。こうして拓人も大事に育ててきてくれた男性……。
そんな岳人パパが笑みを見せてくれたのに、ドッグランで遊んでいる本当の父子へと視線を戻すと、またため息をついて、今度は遠い目……。
ほら。それ。瞬間瞬間に垣間見せていた思い詰めた眼差し。しかも今日の彼のため息はあからさますぎる。いや、心底思い詰めていて、ほんとうに寿々花の横でも気がつかずに様子に出しているとしか思えないほどの姿だった。
「あの……。岳人パパ、最近なにか、気になることがあるの?」
「え? ……あ、うん。ないこともないよ」
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