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いつかの彼とおなじ寂しげな視線に見つめられている。そこに、ぼくはこれからどうしたらいいのかという不安を抱えているのが伝わってきた。
本当の家族はいままで家族ではなく『パパの友人』と思っていたし、これまで誰よりも自分を守ってくれていた『パパ』は、血の繋がりもなかった。この男性はいつだって自分と別れることができる。本当の父親がわかったから、この人はいなくなってしまうのか――『おしえて、すずちゃん』。そんな視線だと通じた。だから!
「たっくん。おなかの赤ちゃんは、たっくんの本当の妹になるんだよ。おなじお父さんの子。ふたりとも将馬さんの息子で娘になるの。たっくんの本当の家族だよ」
「じゃあ、パパはもうお父さんじゃなくなるの!?」
ここで拓人が一気に泣き出した。以前、ママと離れて暮らすことが決まり、パパに甘えるように抱きついて泣いた男の子でなくなっている。自分の意志をはっきりと伝えられる男の子に育っているから、怒るように彼が叫んだ。
「違う。たっくんが生まれてから今日まで、ずっとそばにいてお父さんをしてくれたのは岳人パパだけ。これからもずっとパパだよ。そうでしょ、岳人さん」
寿々花も思いの丈をぶつけていた。
その時だった。泣き顔で叫んだ拓人の元へと将馬がひざまずいた。
岳人パパを隣に、彼もおなじように拓人と同じ目線に整え、まっすぐに見つめた。
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