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寿々花はヨキのリードを手にして、拓人の手も握ってカフェへと向かう。ヨキもちょこちょこと後をついてくる。
歩き出して振りかえると、男二人が額を付き合わせて真顔で話し合っているのが見える。
拓人も気持ちが落ち着いたようで、涙を拭いて寿々花を見上げている。
「……もう三佐って呼んだらだめかな」
「三佐のままでいいよ。あ、でも。たっくんがもう少し大きくなったら二佐になってるかも」
「三佐もいつか将補になる?」
「どうかな。でも、なるかもね~」
「じゃ、伊藤『しょうほ』パパと一緒になっちゃうから、それまでに、お父さんって呼ぶかも」
いつか『お父さん』と自然に呼んでくれる日が来そう。寿々花はそう思えて、いつもの拓人の口調に戻ったことに安堵して微笑んだ。
そして拓人の目線がまた寿々花のお腹へ向いていた。
「ぼくの、ほんとうの妹なんだ。おなじお父さんの妹。ぼくのほんとうの『きょうだい』ってことだよね。すずちゃんの子がぼくの妹」
やっと、嬉しそうな笑みを見せてくれる。寿々花もほっとした。
寿々花も改めて、繋いでいる拓人の手をぎゅっと強く握った。
拓人も気がついてくれ、寿々花の丸いお腹へと抱きついてくるから、強く抱き返す。
私の息子と娘がいまここにいる……。そう思って。
突然のパパからの告白に衝撃を受けて驚かされ、一気に不安になったことだろう。大好きなパパがいなくなっちゃうと焦ったことだろう。でも、ここ二年あまり、毎日毎日、将馬と寿々花と一緒にいたことが助けてくれたんだと感じられた。それがあったから、拓人はまた、いつもの拓人にすぐに戻ってくれた気もした。
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