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お嫁さんズが大喜びで、札幌市内にある荻野製菓本社まで来てくれることになった。
「さて、仕事も一段落。お昼休みにしようか。今日の差し入れは『おにぎり』だよ」
外から企画室に入ってくる朋重は、よく差し入れを手土産に持ってくる。もちろん、その量も心得ていた。
彼の差し入れを千歳よりも楽しみにしているのは伊万里。
「うおーー! めっちゃ入ってるじゃん。さっすが朋重兄ちゃん!!」
「お米屋さんが同じ敷地内で経営している『おにぎり専門店』のものなんだ。うちの『筋子』とか『たらこ』とか、『昆布佃煮』とか卸してる関係で、大量予約を受け付けてくれたんだ」
婚約後に改めて知ったことだが、夫になった朋重は、水産会社経営関係者として食品関係のコネクトネットワークが広い。そのおかげで前もって予約しておけば、荻野姉弟対応の大量注文も可能になり、様々な差し入れをしてくる。
今日もいくつもの具材のおにぎりを五十個も持ってきてくれた。
実際、これ以上食べられる力がある姉弟だが、それでも五十個も差し入れしてくれたことが嬉しい。伊万里もそれはわかっていて、自分が準備したランチ+おにぎり二十個で大満足、大喜びだった。
夫婦と義弟、三人でテストキッチンでそのままランチタイムに入る。
千歳が緑茶を入れて、朋重と伊万里が『これなんの具かな』とワイワイとおにぎりを分け合っている。
さて。私もいただきまーす、今日も伊万里に負けないもんねと、千歳も頬張った。
一個、二個、三個、今日も順調に『食べる魔女』に大変身――。
と、思っていたのだけれど。『こんな味だったかな?』と首を傾げた。
四個……五個……。大好きな筋子のおにぎりを頬張ったところで、千歳は食べる手を止めた。伊万里と談話していた朋重が、そんな千歳の様子に気がついた。
「ちーちゃん、どうかした?」
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