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すぐそばに寝そべって、大きな手で千歳の頬を撫でてくれる。千歳もうっとりと目を瞑り、その感触にとろけるように甘える。そのまま、夫の首に腕を回して抱きついた。朋重も、千歳の身体を横から抱き寄せ包み込んでくれる。でも、いままでのように思いっきり千歳の身体にのしかかるように体重はかけてこない。そっとそっと、特のお腹に触れないよう気遣っているのがわかった。
「神様、なんだって?」
「流産するかもしれなかったから様子見をしていたって」
それにも朋重は息を引くような驚きの息づかいを見せた。
千歳も少し苦々しく思いながら、そっと目を閉じる。
「子どもを望むようなことをしていたのに。仕事にかまけて、重要視していなかったこと、もう一度よく慎重に考えなさいと言われた」
「そうだったんだ……。ごめん。俺も、軽く考えていたかも。愛しあって出来たのなら、『そこからだ』と思っていた」
「私も……。自分たちがわかる前から、もう慎重になって覚悟を決めておかなくちゃいけなかったんだね。仕事が優先だなんて、どうして」
「でも、それならここからは本当に大事にしよう。千歳のお腹にいる子は、荻野家の長子だ。大事に育てて後に繋ぐ使命が俺と千歳にはあるのだからね。大丈夫。俺も全力で守っていくよ」
そっと目元にキスをしてくれた。
ほんとうに、優しい旦那様、婿様だった。
彼を『いいじゃない』と見初めてくれた祖母に感謝をしている。
さすが縁結びの神様がおそばにいるだけある。
千歳も会ったその日から、違和感がなく、戸惑いがあって躊躇った日々もあったが、いまは朋重と夫婦になれたことを幸せに思っていた。
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