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「荻野の伝承でいくと、この子に神様がつく予定ってことだよな。どんな神様かな」
朋重はずっと千歳のお腹を撫でていた。
もう伝わっているはず。パパの大きな手と温かさと優しさが。
千歳もどんな神様がつくのか、ドキドキもしているしワクワクもしている。
でも。長子が必ず見るとは限らないとも言われていた。
いままでもそんなこと、あったのかと千歳はふと考えてしまった。
---😇💕👶
婿入りをしてくれた朋重は、跡取り娘の妻を支えることを信条に結婚してくれたため、ほんとうに甲斐甲斐しく世話をかってでてくれる。
結婚してからも、妊娠する前だって、家事分担はあたりまえ、家業へ勤しむこともあたりまえ、むしろ妻の責務だから、夫としても存分に協力するという姿勢をみせてくれていた。
見合いだったり、政略結婚的な経緯はあったものの、出会った後は本当に熱烈な恋を謳歌して、愛を育んだと言い切れる。
千歳が初めて、心から安心して溺れることが出来た恋で愛だった。
結婚後は、祖母が相続してくれた植物園近くのマンションで新婚生活を堪能した。
仕事も夫と邁進して充実した日々の中、生まれたちいさな命。
『妊娠しているかも』とわかったらすぐに、朋重が産婦人科に連れて行ってくれた。しかも、男性だからと恥ずかしがることもなく付き添いもしてくれた。
診察室で、千歳と一緒に診断を聞いてくれたのだ。
千歳のお腹に生命が宿っているとわかった時の、夫の打ち震える感激の顔。そんな朋重の喜びの表情を、すぐ隣で目にすることが出来た千歳は、ほんとうに幸せ者だと思っている。
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