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「お父さんは、五代ぶりの長子男児として産まれたんでしょう。どうだったの。お祖母ちゃまもだよね。長子に女児ばかり生まれる家系と言われてきたのに。長子に男児が生まれて、周囲の反応が異なったのではないかなと……初めて気がついたの」
穏やかな『妊娠報告の親子お茶会』だったのに、千歳の妙な質問で空気が一変する。
両親も一気に顔色を変えた。
千歳も緊張をしている。子どもだから見えなかったことがあったはず。ひいては、千歳にも『男児が長子』として生まれたらどうしたらよいのだろう。そんな不安があるのだ。
長子は女児とは決まってない。その証拠に一代前に長子男児として父が誕生したのだから。そのうえ、父だけが長子故か『神がかり』的な夢を見て、その夢に出てきた聖女とそっくりの女性と出会って結婚もした。そんな不思議な縁を持ち、それこそ荻野的だと証明できてお家に安泰をもたらしている。
男児が生まれても大丈夫だとわかっている。でも、ほんとうに父は、久しぶりの男児誕生で親族から歓迎だったのだろうか。
よくある『男も産めない女』の逆バージョン。祖母はなにも言われなかったのだろうか。千歳もだ。男でも女でも授かり物だからどちらでも千歳は歓迎する。でもこの子が男児だった場合に取り巻かれる不穏な空気が充満するなら、払いのける覚悟をしたい。長子の母として。それが気になったのだ。
荻野の跡取り娘だからこその不安が、いろいろ芽生えている。
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