③神様の宴会で

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③神様の宴会で

 荻野家は長子相続、女児が多い。  だったら、男児が生まれたら妙な視線を向けられるのか。  五代ぶりに長子男児として生まれた父は、出産した祖母は、親族にどうみられたのか案じる千歳。  そんな千歳を見て、父と母が顔を見合わせ、神妙な(かんばせ)を揃えた。  改めて娘を見据えた父の目つきが冷徹に変化した。千歳は我に返り、背筋が冷える。 「千歳。らしくないな。やはり女性は妊娠をすると、精神が不安定になるものなのかな」  母も同様に、案じるというよりも、とても静かな眼差しで娘を見つめ、夫の言葉に頷いている。 「どうして男と女で分ける? 何故、当家は男女関係なく長子相続にしている? どちらが生まれても長子が継ぐ。元より、男女平等だ。いつからかわからないが、長子にはおおむね『神』がついてきた。それが富をもたらし、世間に貢献する源となってきた。たまたま女児が続いただけで、男児が生まれたからと疎まれたこともないし、母も私を長子として育ててきたよ。そして私と凛香も、長子に生まれついた千歳が女児だからと特別に思って気構えたことはない。千草母が私を育てたように、私もただ神がついた長子として、千歳を育ててきたつもりだよ」  千歳は目が覚める思いだった。  父が言うとおりだった。どうして、当家は女児でなければいけないなんて思い込んでしまっていたのか……。 「……そうだった。そうでした。女児が多い、女性が支えてきたと思い込んでしまって……」  自分こそが『男児・女児』と拘っていたこと、恐れていたことを自覚して、千歳は恥じて落ち込んだ。  いつも毅然としている千歳が自己嫌悪に陥ってることを知った朋重が、そっと寄り添ってくれる。
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