③神様の宴会で

4/6
前へ
/916ページ
次へ
 え、そう、かな?  朋重が気がついたことに、千歳はすぐには飲み込めなかったが、娘として『不思議ちゃんみたいな母』を感じ取ってきた身としては、否定も出来ず。しかしそう思えば、女児も男児も、どちらが産まれても大丈夫と思えるようになっていた。  その日の夜、千歳はまた神様の夢を見た。  いつもの石狩の海で、神様たちが宴会をしていた。  福神様と、黒髪女神の石狩保食神様。  今回、初めて目にする神もいた。  平安時代を思わせる和装装束を着込んだ男性と、白いベールを金髪になびかせている白ドレスの女神。  和装の男性の目つきは鋭く冷徹な表情をしていて、千歳はぞっとした。  でも、金髪の女性が千歳に気がついて、目が合った。  微笑みかけてくれたそのお顔は、まさに母にそっくり。  思わず『お母さん、そこでなにをしているの』と言いそうになったが、いつものごとく声は出ない。  しかも近寄れない。なのに金髪の女神様は、千歳にいつまでも優しい笑みで見つめてくれていた。  その日の福神様は、宴会に夢中で千歳には気がつかず。そのまま夢から目が覚める。また不思議な感覚だった。  しばらくして、母だけが千歳に会いに来てくれた。  妊娠初期の娘を気遣い、作り置きになるお惣菜をいくつも作って持ってきてくれたのだ。  千歳が食べたいとぼやいていた『おはぎ』も、本店まで出向いて見繕ってきたとのこと。  ほわっとしている母だが、やはり母は母。しっかり者の長女として、ふだんは放任しているふうな顔をしていても、いざというときはそっと手を貸してくれる。娘としての気持ちが溢れて、千歳の目から涙が滲みそうになった。 「あら、珍しいわね。あなたがそんな顔をするなんて。やっぱり、妊娠して気持ちが不安定になっちゃってるのかしらね。そうよね。初めての出産に子育て、しかも、荻野の跡継ぎを育てるとなったらプレッシャーかかるわよね」
/916ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5114人が本棚に入れています
本棚に追加