④浦和水産の困り事

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④浦和水産の困り事

 つわりが本格的に感じられるようになってしばらく。  今度は義兄夫妻がお祝いに植物園近くのマンションまで会いに来てくれた。  朋重の兄『秀重』と、兄嫁になる『桜子』。弟夫妻のおめでたに、こちらも『子どもたちに、いとこができる』と喜んでくれる。  義兄夫妻には子どもがふたりいる。中学生の長男と、十歳ぐらいの女の子の兄妹。桜子義姉が設計士で忙しくしている代わりに、敷地内同居をしている朋重の母親が孫の面倒を見てきたとのこと。  千歳にとっては、義理の甥っ子、姪っ子たちになる。そのお子様たちもたまに、義兄夫妻と一緒に遊びに来てくれる。だが今日は義兄夫妻だけの訪問だった。  また植物園の緑が見えるリビングで、義兄夫妻と向き合って談話する。 「おめでとう、千歳さん、朋重。これでまた新しい家族が増えるな。楽しみだよ」 「ありがとう、兄さん。先輩パパとして、いろいろ教えてくれよな」 「つわりがだんだんきついころでしょう。お仕事も続けているみたいだけれど、大丈夫かしら。千歳さん……」 「お義兄さん、お義姉さん、ありがとうございます。融通が利く部署にいますので、大丈夫です。いちおう室長という肩書きもありますし、弟の伊万里もおなじ部署ですから」  千歳も義姉の桜子に『初めての出産、子どもなので、先輩ママとしていろいろ教えてください』と伝えると、二児の母である桜子義姉も、快い笑顔を見せてくれる。キャリアウーマンで、尚且つ長男嫁をそつなく務め、義両親との関係も良好である桜子義姉。なにごともバランス良く理想の女性のように生きている彼女を、千歳は尊敬している。  おふたりが初めての妊娠・出産の時はどうだったのかという話題で盛り上がる。長男がもう中学生であるため『懐かしいな』、『懐かしいわね』という落ち着いた笑みにも、千歳は頼もしさを感じていた。
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