④浦和水産の困り事

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 つわりが始まっても、握り飯五個もいけるのはさすが『食べる魔女』と言いたそうな義兄夫妻だが、いまは桜子義姉同様、普通の女性並みしか食べられないと知って、おふたりががっかりしている。 「ですけれど。伊万里ひとりでも、いけると思います。ブランド牛食べ放題と聞いたら、ほいほいついてきますわよ、きっと。連絡しておきますね」 『まあ確かに。弟君もあの食べっぷり。いけるかな?』と、秀重義兄も心が落ち着いてきたようだった。  それを眺めていた朋重が、千歳にそっと耳打ちをして来た。 「食い気は伊万里君に任せるけれど、千歳は神様をつれて行くってことだろう。おもしろそう。それにうちの会社を助けてくれるってことだろ」  そう囁いた朋重も、兄に『妊婦の妻には夫の付き添いも必要』とついて行くと言いだし、副社長の彼も参加することになった。  千歳の頭の中でひさしぶりに『肉、肉肉、肉ですなっ』と福神様が飛び跳ねている。  いえ、私自身、そんなに食べられないんですけれど? 福神様、我慢できるのかしらと、こちらが心配になってきた。
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