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福神様がそう仰るから、きっとなにかあると言われてしまうと長子跡取りとしての使命感が湧いてしまう。
合流した秀重義兄と桜子義姉も、妊娠初期の跡取り娘を連れ出してしまった手前、『無理しないで!』と労ってくれる。
しかし、千歳も『気になることがある』と伝えると『荻野のご加護でなにか!?』とおろおろしながらも、優しく付き添ってくれる。
戦力外である食べる魔女。そんな状態で品評会会場に入場したのだった。
---🐮🍀😇🍴
雄大な湖が見渡せるレイクビューの宴会ホールが会場だった。
広い会場には、ホテルに食材を卸している食品業者のブースがテーブルや屋台風で設置されていた。
業者のみが許された入場のため混み合うこともなく、社員証を首にかけているスーツ姿の社員ばかりだった。
千歳も品評会は初めてではないので慣れた空気ではあったが、この有名な湖の温泉街での品評会は初めてだった。
見渡していると湖が綺麗に見える窓辺のあたりに、浦和水産の幟旗を発見する。
「うちの社はあそこだよ。千歳さんと伊万里君が好きな海鮮丼をイチオシにして、今年は朋重が差し入れたという『おにぎり』も、おすすめ食品として出してみたんだ。鮭に筋子に昆布佃煮、どれも我が社自慢の商品だからね。いいヒントをもらえたよ。あと、朋重がよく作っているスモークサーモンのマリネ、千歳さんが絶賛してくれた『おつまみテリーヌ』も置いているんだ」
義兄の案内だけで、千歳はもう『おいしそ~』と脳内では福神様と一緒にわくわく小躍り状態。食べたい気持ちはいつも通りだった。
伊万里も浦和水産のブースを見つけて大喜び。
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