⑥お肉屋さんの挑戦状

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「長子相続? そんな決まりがあんの!? ん? 確かに。会長さんはお祖母様で女性、長女だったってこと? じゃあ、いまの社長さんは男性だけれど、長子長男だったからってことなのか。知らなかった! あ、だからお姉さんの結婚相手は婿入り条件ということだったんだな! なるほど!!」  素直に驚かれて感心した様子で、また千歳をじろじろみているではないか。でも、今度の長谷川氏の視線を千歳は嫌に感じなかった。  なんか、思ったよりも素直? ちょっと天邪鬼なだけで。どちらかというとビジネスマンではなくて、融通が利かない職人さんのような雰囲気を、千歳はやっと嗅ぎ取っていたのだ。  それならば、妙に愛想がないのも、ぶっきらぼうな気質もわかるような気がした。おいしい肉を生産する職人なのかもしれない。  そんなお父さんを、今日は素直そうなお嬢様が愛嬌でサポートしているようだった。  そのお嬢さんが空気を変えようと、また笑顔で話しかけてくる。 「せっかくですから。うちのお肉、食べていってください。父と兄が手をかけて育てた和牛なんです」  そんな彼女に伊万里が話しかける。 「お父様とお兄様自ら、牧場で手間暇かけられているということですか」 「はい。そうです。私は直営レストランの手伝いをしております」 「直営レストラン! 長谷川さんにレストランがあったんですね」 「はい。まだ開店して二、三年です。よろしければ、そちらもいらしてください」    愛らしい笑みで小さな紙皿に肉を盛り付けてくれ、伊万里に差し出してくれる。 「どうぞ。弊社の牧場で育てた和牛です。まずはサーロインからどうぞ」  眼鏡の大人しそうな女性だが、笑顔がとてもかわいい。
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