⑥お肉屋さんの挑戦状

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 長谷川社長が、隣のお嬢様『木乃美さん』に指示をだした。しかもお嬢様も楽しそうに『はい!』と明るく返事をして、クーラーボックスへと向かって準備を始めてしまった。  1ポンドは453.6g。アメリカンサイズだ。それをフィレとかモモとか、急に大盤振る舞いなことを言いだした長谷川社長に、千歳はおろかそばにいた朋重も仰天する。伊万里だけが『いいんですか!』と飛び上がっている。 「これって浦和さんからの挑戦ってことだよね。いつも、うちの肉をちょぽっとしか食べないお魚屋さん。畜産の美味さで打ち負かしてみせようぞ」  なにかの挑戦状を荻野姉弟は受けてしまったらしい。  この畜産ひと筋の社長が、水産会社関係者に常々しかけていた『合戦』にあっというまに飲み込まれてしまった。 『わーー、なんて大盤振る舞いな肉屋なのッ!! さあさあ、どーんと来なされ、来なされ。あー麦酒がないのが惜しい、惜しい』  さあ、千歳。行きなされ!!  福神様に扇子で指揮をされ出陣を許されるのだが。『私、つわり中なんですけれど!!』と辞退もできずに、戦へと差し向けられてしまった。
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