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そんな千歳の目の前にも、ステーキ肉の鉄板皿が届いた。
「はーい。女性のお姉さんには、ノーマルに200グラムのサーロインだよ。女性ならこれぐらいでしょ。お婿さんも同じでいいよな」
千歳と朋重の目の前には、よくみる厚みと大きさのサーロインステーキを長谷川社長が自ら届けてくれる。
伊万里のあんな美味しそうな叫びを聞いてしまっては、姉の千歳も待ちきれない。福神さまのわくわくのお顔もちらちら脳裏に現れて、『弟みたいなの食べたいけれど、致し方なし~。でも、さきほどのお試しちんまい肉をまとめていまから味わえるのだね!』と正座をしながら、『はやく、はやく』と急かしてくる。
もうしようがない神様だなあと千歳は心でぼやきながらも、自分も待ちきれない! さっそく、朋重とともにナイフとフォークを持ってカットしてひとくち。
「うまい! うん、伊万里君がいうとおりだ。旨みとコクがある脂だけれど、後味がすごくすっきりしている。すぐに次のひとくちに行きたくなるね」
「あ~……。さきほどのひとくち以上の味わい。私もしあわせ……」
『あー、なんて極上な肉なの~。なんで麦酒がないの~……。でも、こんな肉を生み出すなんて、長谷川殿あっぱれですぞ~』
なんて、福神様がうっとりほわほわのお顔で肉を噛みしめているお顔も登場。長谷川社長に教えたいほどだった。
荻野夫妻の揃った至極の感想に、やはり長谷川社長は鼻先を空へと向けてご満悦のお顔に。しかしそれも一瞬。伊万里の鉄板皿が既にからっぽになっていたことに気がついた社長がギョッとした顔に変わる。
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