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朋重はなにも知らないからニコニコと、義弟と女の子が連絡先交換をしているのを眺めているだけ。だが不在の間に見合いを申し込まれていたと知ったら彼も驚くだろうなあと千歳は思う。
そんな木乃美に、朋重がやっとトマトジャムを使ったスモークサーモンマリネを差し出した。
木乃美も、一切れ口に運んで『おいしい!!』と可愛らしい驚き顔を見せてくれる。
「私は玉ねぎを刻んだドレッシングでしたが、浦和さんは玉ねぎのスライスとニンジンとピーマンの千切り漬けなんですね。スモークサーモンに合っています。美味しいです!!」
「木乃美さんのドレッシングもお肉にすごい合っていたよ。このトマトジャムの売り方、また増えるんじゃないかな。どう荻野室長」
「うん。まさか、朋重さんが活用しているように、ほかの方もこのように活用しているなんて思わなくて。そうね。こんど、また違う売り方できるかもしれないわね。ねえ、伊万里」
「そうだな。今日、連れてきてもらってよかった。おいしいお肉に出会えたのも嬉しかったけど、俺、こんな品評会初めてで、こんなふうに他の業者さんと触れ合うことで勉強になるって初めて感じられたよ。また来たいな」
食べる戦闘要員のつもりでやってきた伊万里だったが、仕事としてもなにやら目覚めることができたようだった。
「木乃美さん。あとでお父さんにもう一度謝ってくれるかな。ほんとうに、ひと皿、木乃美さんと食べ比べしたくて持ち込んだだけなんだ。長谷川さんと対面しているバイヤーさんを横取りするみたいにしてしまって申し訳ない」
朋重が頭を下げると、木乃美も『やめてください』と慌てた。
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