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⑨たくさん食べたら福が来る
湖の青さが見渡せるホールの賑わいの中、品評会は大盛況となる。
長谷川精肉で戴いたステーキ二枚とローストビーフを食べ終えた途端、千歳はまた吐き気に襲われた。
もう~完全に神様が満足したい間だけ体調をよくされて操られていただけじゃないかと。でも、ほんとうに美味しいお肉だったと千歳も感動はしている……。いつか絶対、私も3ポンド食べると誓っていたら、夫の朋重が『ぶふっ』と吹きだして『出産後のご褒美で好きなだけ食べさせてあげるよ』と約束してくれたので飛び上がり、千歳もご機嫌を取り戻した。
でもやっぱり吐き気でへろへろになって、千歳はそのまま長谷川ブースのテラス席で休ませてもらう。
伊万里はそのまま朋重と一緒に、他業者のブースへと試食やご挨拶へと出向いていった。
若い伊万里にとって品評会は初めてのことだったが、義兄の朋重に秀重社長が付き添ってくれているので、安心して巡回しているようだった。とても勉強になっているようで、今回はかえって弟には良い経験だったなと思えた。
福神様が『なんかウキウキするから行きましょ、行きましょ。なんか、おもろいこと起きそうなかんじがするわ~』と仰っていたことは、このこともあったのかなと思えてきた。
いや、もしかすると福神様が呼び込んだのは、いきなり申し込まれた『お見合い』のほうかもしれない……。
あのちょび髭お父さん、本当に祖母か父に申し入れるつもりなのかと千歳はまだ困惑している。
でも、伊万里は『畑においで』と普通に接しているし、千歳も木乃美には好ましいものしか感じない。以前、伊万里が若気の至りで連れてきた花嫁候補の時のような、『あ、駄目だ』というインスピレーションは一切なかった。
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