⑨たくさん食べたら福が来る

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「弟君から聞いたよ~。『私だったら3ポンド食べられるのに!』って悔しがっていたんだって? それ、見てみたいわ。そんな細身のお嬢ちゃんが3ポンド食う姿ってさ」 「あはは……お恥ずかしいですが、今日はつわりでステーキ肉二枚しか食べられなくて、次々と平らげている弟が羨ましかったです。私、弟に『食べる魔女』と呼ばれているんです」 「食べる魔女! 言い得て妙ってことだな。よし! お姉さんが食べられるようになったら、お祝いに3ポンドご馳走するからな!」 「いえいえ、そんな、ご馳走になる義理がありませんし、本日試食なのに、弟と併せて、私もあんな上等なお肉を二枚も戴いてしまったのに」  するとまた、ちょび髭社長が顎をさすりながらニヤリと、千歳に意味深な笑みを向けてきた。 「今日ってさ。義理のお兄さん、浦和社長に頼まれて来たでしょ。いっつもうちの肉をたくさん勧めても食べてくれないからさ。うちでおなかいっぱいになると他のブースでの試食ができなくなる。他のブースで試食を終えてから来るともう腹も膨れているから、うちの肉が食べられなくなる。浦和さんだけじゃないよ。他の業者さんもそうなんだよ。肉ってご馳走でメインディッシュになるぶん、ほかに食べたいものの分量を抑えてしまうだろう。だったら肉を小さくして、ほかのものも食べられるようにと量を変えられてしまうのが悩みの種だったんだよね。それをさ……。今日は美味しそうに平らげてくれる戦闘員を送り出して、いいかんじにデモンストレーションしてくれて……。弟君のひらめきまで戴いちゃってさ。その御礼だよ」
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