⑩長子三代の目利き

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 いつも集まる時は、両親と一緒に来る弟がいないので探してしまった。  父の遥万が教えてくれる。 「牧場がある町からわざわざ札幌に出てきてくださったものだから、市内のホテルで一泊されるとかで、長谷川のご両親とお兄様と木乃美さんを伊万里に迎えに行かせたんだよ」 「お兄様も? 龍介さんも今日は一緒なの」 「そりゃあ。家族で食事会だからな」  千歳は思い切って聞いてみる。 「今日って……。もしかして……その……伊万里のお相手として、ということ?」  そこで父が、長老である祖母を、自分の母親を窺った。  いちおう父は家長として家督を継いでいるが、最終権限はまだ長老の祖母が握っている。その祖母が静かに口を開いた。 「それを今日、決めるのよ。今回の件、見合いのようで、見合いではないからね。千歳と朋重君は両家の了承を確認した上で結婚前提のおつきあいを始めただろう。伊万里もそうしようとしているのよ。長谷川さんはお見合いを申し込みたかったようだけれど、そのまえに伊万里と木乃美さんが親しくなったものだから、今回は見合いの席はなし、『結婚を前提にした付き合い宣言』ということになる」  それを聞いて、千歳は予測はしていたものの驚きを隠せなかった。  たびたび木乃美や長谷川社長と会っていたことはわかっていても、伊万里の本心は不透明で気持ちも聞いていなかったからだ。 「それって。品評会で出会ってから徐々にお付き合いを意識しはじめていた、ということなの?」 「そのようね。少しずつ親しくなって、では、お付き合いをしようかというときに、伊万里から相談を受けていたのよ。付き合ってから紹介より、家族に認められたうえでお付き合いを開始したいとね」 「伊万里がお祖母ちゃまに、女性とのおつきあいについて相談したってこと? それって、いつかの家族にも認められない女性だと付き合いが続かないと経験したから、順序を踏まえてと考えているわけ?」
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