⑩長子三代の目利き

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「ここまできたら、もうわかるね。ここにいる三代の長子、祖母の私、父親の遥万、姉の千歳。前回とおなじだよ。きちんと見定めようと思う」  祖母と両親は、今回初めて木乃美と長谷川社長に会うとのことだった。  あちらのご家族も、初めて荻野の祖母と両親との対面ということになる。 「木乃美さん自身と、長谷川のご家族は、荻野の家訓についてご存じなの?」 「木乃美さんと社長であるお父様には、伊万里から当家のしきたりや家訓については説明はしたみたいだね。木乃美さんはともかく、長谷川社長はやや不審がられていたみたいだが、娘が伊万里君の言うことを信じているならと、いちおう飲み込まれたみたいだよ。今日も長子の見定めが必要だと伝えたら、娘の品定めかと、一度怒られたみたいだね」  ああ、あのお父様らしいなと、千歳はちょっとだけ思い出して笑みを浮かべてしまった。  それを目の前で見ていた祖母も父も、訝しそうに眉をひそめた。 「おや、千歳ちゃん。あちらのお父様が怒られたことがおかしいのかい」 「おまえは品評会で一度対面して、対話もしていたようだが。浦和の秀重君からも聞いているが、口が悪くて癖が強い男性だが悪い人ではないと。ただ接し方を間違えると行き違いを起こす可能性があるから、よくよく顔色を見て接したほうがいいと教えられたのだがね」  祖母も父も、あのちょび髭社長のことを浦和のお義兄様から聞いて、なんだかんだ構えているんだと千歳は知る。この祖母と父に気構えを持たせるなんて、初対面も済ませていないのにさすがちょび髭社長と千歳はまた『ぷふ』と笑いがこぼれてしまった。  祖母と父が呆気にとられている。
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